12月の銀座。
今年も一年で一番の活気が戻り、人の波が街並みを彩っています。
ちょうど一週間前の夕方のこと。
中央通りに面した書店で、一冊の本が私の目を引きました。
「これ、読みやすい」
最初の2ページを読んで、迷わずレジへ。
この物語の舞台は、3月の銀座。
ページをめくるたびに、実在する銀座の名店が次々と登場します。
和光、ティファニー、木村屋、パウリスタ、
歌舞伎座・・・ そして先ほどの書店――。
まさに銀座そのものが
物語の中心に据えられているのです。
ほぼ同じ時間帯、ほぼ同じ場所で展開される
5人の人生の重要なひとコマを描いています。
その中で、圧倒的な存在感を放つのが、
自らを「王子」と名乗る謎の人物。
異なる5つの物語を、
見えない一本の糸で巧みに結びつけていきます。
王子が登場するたびに、現実と御伽の世界を
行き来しているような感覚に包まれます。
心に安らぎを与え、
夢を見るような時間を過ごせる一冊です。
そら
追記
この作品を読み終えた翌日。
新しいクライアントさんからオファーを頂きました。
その方は小説に登場した某ショップの店員さん。
「物語から飛び出してきたのかな?!」
現実と御伽の世界を行き来するような不思議な
時間は、まだ続いていたようです。